スウィング、スウィング、スウィングしたくなるジュエリー
今回紹介するのは、東京・井の頭線沿線でデイリージュエリーを制作しているジュエリーブランドSam。身に付ける人をハッピーな気持ちにする手仕事で、全国のお客さんから愛されています。ひとつひとつのジュエリーに込められた熱い想いを、デザイナーであり製作者である牧佐江子さんにお聞きしました。
空間デザインからジュエリーへ
Samのアトリエは、閑静な住宅街のある東京都井の頭線沿線にあります。
牧さんは東京生まれ、埼玉育ち。
高校卒業後は、インテリア関係の仕事を目指して、デザイン学校として知られる桑沢デザイン研究所で空間デザインの勉強をされました。しかし、自身は空間のような大きなものをデザインすることには向いていないのではないか、と思い悩み、考え抜いた末に自分がやりたいことはもっと身近にあるものづくりなのだ、と少し軌道修正。ジュエリーの道を目指すべく、ヒコ・みづのジュエリーカレッジでジュエリー製作の基礎を学ばれ、アクセサリーの会社でオリジナルラインの企画や生産管理、製作をされていたそうです。
入社して6年間、バリバリと戦力として働いていた牧さんでしたが、気持ちに変化が訪れます。
「30歳を目前に、本当に自分が欲しいもの、身に付けたいものを作りたいという思いが強くなりました。1年後に会社を辞め30歳で独立しました。就職して企業でデザイン業務に携わっていたことで、お客さまのことを考えてものづくりをする経験ができ本当によかったと思います。」
そういえば、なぜ“Sam”という名前でスタートされたのでしょうか?
「私の名前 Saeko Makiのイニシャルからです。あと、当時偶然流し見していた海外ドラマで女の子の名前の“Samantha”の愛称『Sam』は男性の名前にもあるような抽象的な印象も気に入ってつけました。」
流行にとらわれず自由を楽しむ
Samのブランドポリシーは、“流行にとらわれずに自由を楽しむ”です。
「普段からテレビや雑誌をあまり見ないので、その時の自分のマイブームの色とか形や質感をジュエリーづくりに反映しています。
私が作っているのは、“シンプルでほどよい存在感”をモットーにした、身に付ける人の個性の一部になるようなデイリージュエリーなので、付け心地も意識しています。ジュエリーは肌に触れるものだから、素材を触りながらデザインをするようにしています。自分の体の一部のように感じられる肌馴染みのよさや、軽やかさもデザインしています。」
素材はK14GF(ゴールドフィルド)を好んで使われているようですね。
「K14GFは本物の金の輝きを手軽に楽しめる素材です。金によるコーティング層が厚く、熱と圧力を加えて圧着しているので、金メッキのようにすぐに皮膜が剥げてしまう心配がほとんどなく、耐久性にも優れています。本金に比べるとカジュアルだけど、金メッキよりも長く使えて18金よりも柔らかい色味が大好きです。」
眺めているだけで退屈しない、色と質感の巧みなコンビネーション
Samのアイテムは、どれも素材の持つ質感、色のコンビネーションやバランス、ハーモニーが実に巧みであることに驚かされます。
「色はまとまっているけど、どこかに少しちょっと遊びがある使い方にこだわっています。」
Samの代表的なジュエリーのひとつに『ビーズスウィングピアス』があります。“大人が身につけられるカラージュエリー”をコンセプトに、豊富なカラーバリエーションで展開されている魅力的なピアスです。
「天然石にはないマットな色やヴィヴィッドな色、細やかな配色を表現できるガラスビーズの存在を知って、ブランドを立ち上げて最初に作ったピアスです。」
ビーズスウィングピアスは、ユニークな色のコンビネーションでこれまでに様々なタイプを展開。
「ビーズは全部で120色くらい使っています。海外の広告や、アールヌーヴォーのグラフィックデザインなどの配色がデザインソースになることが多いです。日常で目に触れる景色や人の姿からデザインの着想を得ることもあります。」
ネーミング通り、スウィングするピアス。品良く軽やかに揺れるように、女性ならキュンと胸が突かれはず!
「ピンなど金具を極力使わずに、直径2mmの極小ガラスビーズを1本のチェーンに通しています。スウィングする動きがカクつかないように、ピンを使っていないのでなめらかに動きます。」
憧れの作家はMarcom BettsとLouis Barragan
影響を受けた作家がいたら教えてください。「まずMALCOLM BETTS(マルコム・ベッツ)です。ごつっとした金属らしさと、ハンドメイドの温かさのバランスが大好きです。代表作の金とプラチナのコンビは、かっこいいけど女性らしい。Samのコンビシリーズに通じるところがあるかもしれません。
次にメキシコの建築家ルイス・バラガンです。彼の建築はシンプルでモダンなデザインですが、メキシコ特有のヴィヴィッドな色が使われています。一見主張の強い奇抜な配色なのにいやらしさがなく、風景に溶け込む感じがとても好きです。」
なるほど、スウィングピアスの巧妙な配色は、バラカンの建築同様に目を引く強い色もありますが、嫌な主張をせずに他の色と上手く調和しています。
これからのSam
イベントやトランクショーでは自ら接客し、お客さんとのつながりを大切にしている牧さんですが、2020年から2021年にかけてはCOVID-19による影響で活動自粛を余儀なくされました。そのような中でも、お客様とのつながりを作りたいとInstagramをまめに更新するなど、積極的に活動されている牧さんに、これから挑戦してみたいことについてお話をうかがいました。
「素材の仕入を御徒町や宝飾店で行っているので、海外だったらタイ、日本だったら山梨など直接産地へ出向いて仕入れをしてみたいです。
また、製作に関しては、ゴールドフィルドの限りある技術の中でやってきましが、鋳造や彫金にも挑戦して『Sam』の世界を広げていきたいです。」
牧さんは、底抜けに明るくておしゃべりで良く笑う、とても魅力的な女性でした。このバイタリティで、今後も素敵なクリエーションをたくさん作りだしてくれそうです。SIROKUでは、牧さんこだわりのビーズが使われた、他にはないカラーニュアンスの魅力的なジュエリーを多数展開しております。SIROKUにしかないオリジナル商品もございますので、是非ご覧になっていってください。