コドモトオトナヲカンガエル リレオストア

ヌメ革のティッシュケースやフラワーバッグ。ありそうでなかった意外な組合せ、想像したこともなかったようなもの、でも使ってみればしっかり生活に馴染んでくれそう!『Lille og Stor(リレオストア)』のプロダクトにはそんな魅力があります。
今回はリレオストアのデザイナー吉金淳さんに、ブランドのコンセプトやポリシー、デザインなどについてお話を伺いました。

『Lille og Stor』はデンマーク語で「小さいと大きい」

リレオストアは2013年に吉金淳さんと矢子さんお二人によって設立されました。淳さんがデザインと制作などのクリエイティブ分野を、矢子さんがアイデア出しやWebサイトやカタログなどのビジュアルに関わる分野をご担当されています。


ブランド名『Lille og Stor(リレオストア)』には、デンマーク語で「小さいと大きい」という意味があります。そこには「子どもと大人」という意味が内包されていて、ブランドコンセプトである『コドモトオトナヲカンガエル=ミライ』につながっています。リレオストアは、北欧の生活空間からインスパイアされた場を彩るデザインを提案し、モノづくりを通して生活に寄り添い、学びと育みのある環境づくりを目指しています。

フラワーバッグとティッシュケース

ブランド設立の背景には、かつて吉金さんがご経験されたデンマークでの生活がありました。
「暮らしを心地よいものにするためのデザインやアイテムに対する情熱や価値観が、日本とは違うように感じました。普通の生活の中に、代々受け継がれてきた上質な家具や美しくて機能的なデザインがあること、大人も子どもも分け隔てなくそういったモノを共有して利用している光景が印象に残っていて、そういうのはいいな、と素直に思いました。」

ティッシュカバー

そして何より驚いたのが、デンマークの教育環境だったといいます。現地の学校を見学した際に、日本との教育の違いを実感したそうです。
「授業は子どもたちそれぞれが考えを発表しながら意見を交換し合うもので、答えを求めたり押し付けたりすることはなく、共に考えて興味を伸ばすようなものでした。自分の子どもの頃を思い返すと、このような環境ならもっと学ぶことを楽しめたのではないか、と思わずにいられませんでした。」

吉金さんは、会社員として勤めていた頃「生きるために働くとはどういうことなのか」を考えるようになったそうです。そこで訪れたデンマークでのこれらの経験から、「興味や好奇心と向き合うことに未来の可能性」を感じ、そしてそのような環境を子どもたちのためにも用意することが自分がするべき仕事なのでは、と思うようになったとのこと。
「不器用でコミュニケーションが不得意ですが、次世代に伝えたい想い、みたいなものがあります。楽しく学ぶことや人とふれ合うことにつながるモノづくりがしたい、と思ったのです。」

大人も子どもも楽しく使える 暮らしを豊かにするデザイン

ティッシュカバー

リレオストアの人気商品であるティッシュカバー『nys』は、ヌメ革で作られています。使い捨てるティッシュと、革製品の高級感やきちんと感が相反するイメージが共存していておもしろい、しかもいつもの生活に自然と収まる機能的なデザインです。

ティッシュケース、フラワーバッグ解体図

リレオストアのプロダクトは、見た目も機能も、構造もシンプルなことが特徴です。
「シンプルさ、引き算のデザインはこだわっていることのひとつです。またいろいろな視点で物事を捉えて答えを模索すること、生活の中の違和感や問題を解決するために、使い方や仕組みを考える行為がデザインだと思っています。」

さらに、性別も年齢も隔てなくボーダーレスに使えることも特徴です。家にあれば、家族みんなで使えそうなアイテムが多い印象です。
「必ずしも便利なものではないかもしれませんが、“暮らし”を豊かにするデザインを提案したいと思っています」

革素材だからできる、Lille og Storが目指すプロダクト

リレオストアが現在展開しているプロダクトの多くにはヌメ革が使用されています。世の中にさまざまな素材がある中、ヌメ革をセレクトした理由について教えてください。
「ヌメ革にも種類がありますが、化粧が少ないものを選択しています。革には生きていた背景があって、それぞれに違いがあります。だから同じ商品を同じように作っても同じものはならない、さらにユーザーの手によって異なった変化をするということもおもしろいと思いました。

また、大手メーカーが作る超量産型のものか職人が作る一点物のような、両極なものが支持されているようなトレンドがありました。職人の一点物を好むのは一部の人かもしれませんが、それでも量産品に対する見方は次第に変わっていくだろう、オリジナリティや創造性、希少性に価値を見出す人が増えていくだろうと思っていて。そこで私は、その中間にあたるところで自分なりのモノづくりを、両者の良い要素を取り入れながらやりたいと考えました。個人でもある程度の量産ができて、使う人が愛着を持つ“自分だけのもの”になるプロダクトを作りたいと考えたとき、それに適した素材が革でした。」

材料

たしかに革の特性を考えると、生産性を保つことも、プロダクトの特別感や作家性にこだわることもできそうです。しかし近年、SDGsや動物愛護の観点からレザー製品への風当たりを感じます。
「革を扱っていると、つくづく『生きていたんだな』ということを感じます。だからこそ、できるだけ無駄なく使い切りたいと思っています。
将来的なことはわかりませんが、現在流通している革は食用としていただいた命の副産物です。だから汚れや傷が付くことに臆することなく、普段の生活の中で積極的に使っていきたい素材だと考えています。革はとても耐久性に優れていますが、いつかは壊れたりくたびれたりする消耗品として捉えています。」

ベクトルは『育みを生む空間』のデザインへ

さまざまな場所で使われているリレオストアのアイテム

ヌメ革の魅力をいかしたプロダクトを多数発表しているリレオストアですが、革製品を専門としたブランドというわけではありません。店舗などの内装に関わる小物のデザインも手掛けています。 これまでに手掛けたものの中には、革を印象的に使ったイスやハンガーラック、商品棚などの什器や、壁に革の端材を利用したタイルのような装飾なども。ありそうでない、楽しい遊びのあるデザインに、リレオストアらしさを見つけました。

「ブランドを設立するにあたって、最初から家具や空間を作るということは難しいと思って、革を使ったバッグやウォレットなどのファッション雑貨やインテリア雑貨で“こんなものがあったらいいな”というところから始めましたが、今後は革素材に限らず、木や金属を組み合わせたりということも試していきたいです。そしてもっとインテリア系のアイテムを増やしながら、ライフスタイルにまつわるさまざまなデザインを展開していこうと思っています。」

大人でも子どもでも楽しむことができるボーダーレスなデザインで生活をもっと豊かにしたい。それによって楽しく学び、楽しく人と触れ合うような空間を作りたい、というブランド設立時の想いを少しずつ具現化しながら、リレオストア・デザイナー吉金さんの思い描く未来は広がりを見せています。

商品パッケージ

最後にリレオストアの商品を包むパッケージにも記載されている、リレオストアが掲げる哲学を紹介させてください。
いろいろと吉金さんにお話を伺ってきましたが、まさにこの言葉にすべてが詰まっているように思えるのです。

Thinking about adult and children = The future.
Each person has their own life's story.
Send your messages to the next generation.
To create an environment where children love to study.
To make people laugh and love life.

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