美しく身に纏う 絹糸と銀のアクセサリー

SIROKUが一目惚れをした、絹糸を立体的に編み上げた『only.シリーズ』。手に取ると、シルクの繊細な感触と品の良い艶が、シルバービーズのマットとミラーを合わせた質感とともにやさしく肌に馴染みます。
作ったのは、大阪でアクセサリー製作を続けるブランド『bimi』のデザイナーであり作家の川城彩さん。
今回は川城さんへ、糸編みと彫金を掛け合わせて、細部にまでこだわって仕上げられるbimiのアクセサリーについて伺っていきます。

突き動かしたのは「これが居場所だ」という確信

作業風景

川城さんがアクセサリー製作を始めたのは、30歳を目前にした頃でした。
もともと編み物や手芸が得意で子どもの頃からずっと続けていたそうですが、アクセサリー製作を始めると次第にその奥深さに魅せられて、あっという間に夢中になっていったそうです。
「すぐにもっと勉強したくなって、彫金作家のもとで基礎を習うことにしました。専門のスクールなどで勉強することも考えたのですが、訓練するほどに技術が向上していくのを感じて、私にはコツコツと独学で習得していく方法が合っていると思いました。」

販売を始めたきっかけは、友人との他愛ない会話だったそうです。
「友人に、そんなに得意なことがあるのにどうして仕事にしないの?って言われて驚いたんです。そんなこと考えたことがなかったので」

bimi  びみ 美纏 絹糸 silk  編む

tresor.a』というブランドで、川城さんがデザインし製作したアクセサリーの販売をスタートしますが、ほどなくして『bimi』にリブランドします。
「作業に没頭してイメージ通りに仕上がったとき、ふと『これだ』と確信したんです。アクセサリー製作に私の居場所を見つけたような感覚でした。
“一生作り続けたい”と強く思うようになって、続けていくためにどうしたらいいんだろう、自分だけの何かが欲しい、と模索するようになりました。そこで趣味から始めたtresor.aのブランドを閉じて、bimiへのリブランドを決めました。気持ちを新たに、というか、これでやっていくぞ、という覚悟を持って」

ひとつひとつの作業とていねいに向き合って技術を磨く

bimi びみ ビミ 美纏 彫金 絹糸

bimiのマスターピース『only.シリーズ』の特徴である、絹糸のポコポコした立体編みの連続は、試行錯誤を繰り返してできたbimiオリジナルのデザイン。さらにアクセントに配置されているシルバービーズも一粒一粒が手作りです。3連ネックレスだと、2.3日はかかる大変な作業量だそうです。
SIROKUギャラリーで4月に開催された「白く展」では、他の作家さんたちがこの非常に細かく編まれた繊細なモチーフにとても驚かれていました。

「細かい作業、ひたすら編んだり磨いたりする作業が大好きなんです。それに編み物も彫金も、根本は似ているように思っています。
例えば今作るものは、製作初期と比べると仕上がりもスピードもまるで違います。
ひと目ひと目編んだり、金属を磨き上げたり、何度も繰り返すことで身体が覚えていくことや、コツコツと丁寧に仕事を続けていくことで得るものがあると実感しています」

bimi びみ ビミ 美纏 silver シルバー アクセサリー ピアス

もうひとつの代表作、編み物のように見える『ami.』は、川城さんが編んだモチーフで型を取ってシルバーを流し込んで成型しています。しかし型を取るからといって大量に作ることができるわけではないそうです。
「ひとつひとつ異なるモチーフを用いています。
さらにこれは網目の出し方が難しくて、すべて製品化できるわけではありません。効率の良い作り方ではないかもかもしれませんが、こういった工程にも価値があると思ってくださるとうれしいです」

bimiのブランド名は、“美しく身に纏う(まとう)=美纏(bimi)”のコンセプトから。銀と絹糸と編みの技法を巧みに使ってアクセサリーを仕立てます。
bimiのアクセサリーが放つ、どこか整然と秩序だった美しさと存在感は、こうした川城さんの手間を厭わない姿勢からくるものなのかもしれません。
only.シリーズもami.も手間がかかって制作は大変ですが、“私らしさ”が詰まっていると思います」

惹かれるのは静かな美しさ

bimi ビミ 美纏

「ブランド名bimiの“美”には、私の憧れや『そうありたい』という想いも込められています。
モノやコト、人、目に見えないもの、さまざまありますが、友人や家族との会話やラジオや映画、日常のさまざまなシーンで感じる私にとっての美がデザインのインスピレーションや制作のモチベーションになっています」

bimiのアクセサリーたちは、顔周りやデコルテ、手首や指先に優しく馴染む艶と質感が心地良さそうなラインナップです。
「今扱っている素材は絹糸とsilver925ですが、絹糸は独特の光沢感と上品さが、銀は何ともいえない白い輝きがたまらなく好きです。」

たしかに、品の良いさり気ない艶がありますね。
「私が惹かれるのは、緻密さや上品さ、静かな美しさです。
だからフォルムや質感、色や輝きは、華美にならないように引き算をするのですが、軽やかなつけ心地の中に繊細さをぎゅっと詰め込んで、私らしい何かを残したいと思っています」

bimi びみ ビミ 美纏

川城さんご自身も美纏のアクセサリーonly.を愛用されていらっしゃるとか。

「私の想いを表現する手段としてアクセサリーを作っていますが、私が自分で身に付けたいかということも作っていくうえで気にしていることです。
only.シリーズは、ふわっと肌に触れる優しい感触と、“シルク”という緊張感と特別感が私の気持ちを上げてくれます。
直接肌に絹糸が触れることから、皮脂汚れなどを懸念して敬遠されてしまうことがあるのですが、
きっと私と同じようにこの作品に共感してくれる人がいるはずだと、そういう人に届けたいという思いがあります。」

bimiのこれから

bimi ビミ びみ only.

川城さんは、同じように活動をしている他の作家たちとの交流が自分の制作活動の支えになっているといいます。
「続けることの大切さや、他の方がやっていることの『芯』を感じると、背中を押されるような気持ちになります。」

作家としてはまだまだ駆け出しだとおっしゃる川城さんですが、今後やってみたいことをお伺いするとたくさんの計画がありました。
「日常使いをしてもらいたいという思いから、これまでは小ぶりなデザインが多かったのですが、
今後は少し主張のあるものを作っていきたいと考えています。
only.シリーズのピアスも近々お披露目できたらと思っています。」

bimi ビミ びみ 美纏

今後、新たな素材や技法を取り入れる可能性は?という問いには、

「絹糸と銀はbimiの根本となる素材なので、これからも手放すことはないと思います。
でも、さらに石や他の金属も使えるようにさまざまな技法を身に付けていきたいです。
作りたいデザインは時代や年齢で変わっていくはずなので、選択肢として使える状態にしておきたいんです」

作品制作に対する想いや技術に関することをていねいにお話していただきました。
川城さんの作品制作に対する熱や集中力、技術習得にかける貪欲な姿勢にどこか職人的な気質を感じます。
鍛錬と洗練を続ける川城さんが作るbimiのアクセサリー、今後の展開に期待が膨らみます。

この作家・ブランドのアイテム一覧
すべての読み物 作家・ブランドインタビュー

こちらも一緒に読みませんか?

やさしさを乗せて届け、陶の動物たち
やさしさを乗せて届け、陶の動物たち
2022年2月22日の“猫の日”からSIROKUにラインナップした『幸生窯(こうせいがま)』が作る小さな陶の動物たち。手のひらに乗る土の重みや手触り、見覚えのある表情や仕草とやさしい存在感に心を奪われます。 今回は、この動物たちを生み出す幸
Read More
やさしい煌めきと透明感 太陽の光に魅せられるアクセサリー
やさしい煌めきと透明感 太陽の光に魅せられるアクセサリー
今回ご紹介するのは、東京の下町亀有でアクセサリーを制作しているアクセサリーブランドChiChi。光と透明感で彩られたアクセサリーは、着ける人も見る人も優しい気持ちにします。“光“と想いをパーツの一粒一粒に込めたChiChiのアクセサリーにつ
Read More
革を愛おしむ女性がつくる革小物
革を愛おしむ女性がつくる革小物
今回ご紹介するのは、兵庫県神戸市で革小物を製作しているブランド4103(読み方 ヨンイチマルサン)。ヌメ革の魅力を大切にしたものづくりで、全国のお客様から愛されています。ひとつひとつの革小物に込められた熱い想いを、デザイナーであり製作者であ
Read More