ネンドピープルはおしゃべり!? 作るのも飾るのも楽しい
表情もファッションもさまざまな彼・彼女たちは、現在大阪府に住むイラストレーターの小島文子さん作の『ネンドピープル』。ファッショナブルな装いとユーモアラスな表情、柔和なフォルムには、私たちの心をつかむ魅力が詰まっています。今回は、SIROKUで人気のネンドピープルの制作について、また小島さんのお仕事についてお話をお伺いしていきます。
どこか自慢げ? 煌めくネンドピープルとの出会い
SIROKUがネンドピープルと出会ったのは、ジュエリーブランド『Sam』の展示でした。ジュエリー製作をされていた小島さんと、Sam のデザイナーで製作者である牧さんとは古くから親交があり、牧さんの依頼でネンドピープルがジュエリーのお供をしていたところでした。ジュエリーを身に付けたネンドピープルたちは、どこか自慢げに見えます。
小島さんがネンドピープルを作り始めたのは、7年前ほどから。販売が始まったのはつい最近、2021年1月からです。小島さんは、DTPオペレーター、ジュエリー製作などの仕事を経て、現在はイラストレーターとしての活動をメインにされています。モノづくりは幼い頃から大好きだったそうで、美術やモノづくりに造詣の深いご家庭で育ち、小学生になるとお絵描き教室に通っていたとのこと。温和で誠実な性格が伺える丁寧な語り口で、ネンドピープルの製作について話してくれました。
あの人に似ている?ネンドピープルはすべて一点モノです
ネンドピープル誕生のきっかけは、ガラス瓶が人に見えたことから。瓶に粘土を貼り付けながら造形して、出来上がったフォルムから顔や服のイメージをふくらませていくそうです。また、ネンドピープルはひとつとして同じものがありません。
「似ている人を作る事はありますが、全く同じ人を作ろうとは思いません。その方が自分が作っていて楽しいし、色々な個性の人がいるのが面白いと思うからです。絵具の工程は、形を眺めて即興で描いていく事もあるし、紙に表情や模様など描いてみて検討する事もあります。」
それぞれにキャラクターの立ったネンドピープルですが、モデルやモチーフはないそうです。
「あとから考えると、私がこれまでに出会ってきた何かに似ているかもしれません。記憶の中のストリートスナップ写真や舞台の衣装、ドラマの登場人物とか。いるかわからないけどなんだかいそうな人、おもしろいな、変だな、新しいタイプだな、というところが私の中での着地点です。」
ネンドピープルを前にすると、どこか含み笑いをしているような、何か言いたげな空気を感じます。目が合えば、ウィットに富んだセリフを披露しれくれそう!
「表情は一番大切にしています。でも、どういう顔にするか、男性にするか女性にするかも、粘土を乾燥させたり、彩色する過程でなんとなく定まっていく感じです。」
「この人たちは、手元に残すことにしたものです。ちょっと悲しそうだな、とか、気が強そうとか、文句言ってそうとか、愛想無いな、とか…いくつか作っていくうちにスタイルが変わってきたこともあって、こういう感じにはもう作れないかな、というものもあります。お気に入りの招き猫や電車模型などと一緒に置いています。」
ネンドピープルのそれぞれに持つユーモアラスな表情や仕草から、私たちは自由勝手にストーリーを想起します。しかもそれがとても楽しい!
1体1体すべて仕様が異なるネンドピープルですが、小島さんはそれぞれに名前を付けることはしていません。
「ネンドピープルと仲良くなっていただける方にお迎えいただけたらうれしいです。」
お迎えしたら、まずは名前を付けて欲しいですね?と尋ねると、
「それは各々のスタンスと距離感でお付き合いただけたら、という感じで…」
いつか本に関わる仕事がしたい、パッケージやプロダクトのデザインなんかも!
小島さんのメインのお仕事はイラストを描くことです。イラストは、繊細でやわらかなタッチとカラーが印象的。
小島さんはパレットクラブスクールでイラスト制作について学ばれました。影響を受けた作家はいますか?という問いに挙がったイラストレーター安西水丸さんの講義も受講されていたとのこと。
「自分の好きなものをずっと好きでいることの大事さを説いてくれたことや、皆がいいと言っても自分はつまらないと言えるブレのなさがカッコいいな、と感じたのを今でも覚えています。また、一生懸命やって緊張して描いている絵は見ていて疲れてしまう、と仰られていたのが印象的で、絵を描くときは意識していると思います。」
ネンドピープルにもイラストにも、小島さんの作品にはユーモアやセンスを感じる優しい雰囲気、登場人物たちが何かをしゃべっていそうな空気感が通じているように思います。
「ネンドピープルは今後もコツコツ作っていきたいです。でも絵の仕事や展示ももっとしていきたい。絵は人物ひとりひとりに焦点をあてたものを描いてみようと試みています。ネンドピープルを作った影響かもしれません。今後は、わかりやすさと共に、雰囲気や世界観といったニュアンスを伝えられるような絵を描けるようになりたいです。」
絵を描くときは、iPadのお絵描きツール“Procreate(プロクリエイト)”を愛用しているそうです。
「場所を選ばないで、気負わずに描くことができる点が気に入っています。構図や色を簡単に変えたりできるから、今まで描いたことのないようなトーンの絵が出来上がったり、RGB印刷のジークレープリントをしたときの発色の良さに驚いたりしています。」
「イラストもネンドピープルも楽しんでいただけたらうれしいです」
SIROKUでは、サイトオープン記念のノベルティのイラストを小島さんに依頼。とても素敵なバンダナが出来上がりました。
これからもSIROKUは、小島さんの作品制作の応援をしていきます。