革を愛おしむ女性がつくる革小物

 今回ご紹介するのは、兵庫県神戸市で革小物を製作しているブランド4103(読み方 ヨンイチマルサン)。ヌメ革の魅力を大切にしたものづくりで、全国のお客様から愛されています。ひとつひとつの革小物に込められた熱い想いを、デザイナーであり製作者である清冨雅子さんにお聞きしました。

靴作りの町神戸で生まれた4103

清冨さんが生まれ育った神戸市は、“靴づくりの町”として知られています。現在も神戸市にお住まいで、4103のアトリエも神戸に置いて製作をされています。
余談ですが、神戸市は靴づくりの町だけあって、小・中・高と学校に下駄箱がなく靴で過ごす時間が多いといううわさを聞きましが…
「本当です。学生時代は下駄箱に入れられたお手紙や上履きに憧れました!」

そんな靴づくりの町で育った清冨さんのモノづくりへの情熱は子どもの頃からのようです。
「小学生の頃は図工や家庭科、中学生になると美術や技術の課題に夢中になり過ぎて、昼夜を忘れて取り組んでしまった結果体調を崩すこともありました。気が付けば、将来の夢は“○○職人”であることが多かったように思います。時計職人とか靴職人とか…」

4103作業風景

「3姉妹の末っ子で、男児を望んでいたのか父に男の子っぽく育てられました!」と笑顔で語る清冨さんは、格闘技もたしなまれると伺い、当初はボーイッシュなイメージを抱きましたが、話を伺うほどに革に対するこだわりや、実に繊細で丁寧な手仕事に、男の子っぽく育てられた女性である清冨さんのユニークな感性が、独自のニュートラルなデザインを生み出し4103の魅力になっていることに気付かされます。

4103の靴

清冨さんは、会社員としてフルタイムで働きながら靴作りの学校で製靴を学び、さらに趣味として靴作りまでされていたとのこと。
「趣味で靴づくりをしていたところ、友人から革の小物作りを頼まれるようになって、気が付いたら今のような形になっていました。普段は靴店で会社員としてフルタイムで働きながら、4103として活動しています。」

命を余すところなく頂く意識。革の手触り、経年変化を余すところ無く楽しんでほしい

牛革

4103のブランドポリシーは、「牛の命を余すところなく頂くこと」です。
「牛革になるものは、元々すべて食用の牛です。革のためだけに牛の命が犠牲になっているわけではないからこそ、最後まで命をありがたく頂かなければならないという意識が常にあります。見えるところにファスナーやボタンを使わず、縫い目を極力減らしているのも、革の手触りを最大限に活かし、使う方に革の感触や命を感じていただきたいという思いからです。」

4103のブランドポリシーには、清冨さんの革に対する敬意、並々ならぬ思い入れが伺えます。昨今は牛革の使用を反対する風潮がありますが、革はあくまでも食用肉牛から出てくる副産物です。牛革使用のためだけに牛の命を犠牲にしているわけではないということは、知っておいていただきたいことです。

4103作業風景

4103の商品は、牛革表面のソリッド感と使い勝手から、生後2年以上の雄牛の革ステアや、生後6カ月~2年までのキップで、1mm厚前後のものを使用することが多いそうです。それらの革裏面をきれいに均すバインダー加工処理や裁断、手縫いでの縫製も清冨さんがご自身で行います。
「以前はミシンで縫製をしていましたが、ミシンの縫製はボビンやマシンの調子にステッチの表情が左右されることがあり、革にミシンの押さえ金具の痕がつき革の持つ魅力が損なわれることに配慮して、今では手縫いで縫製をしています。」
ヌメ革のいいところを最大限に引き出すために、細部までこだわり、素材に敬意を払う4103の美学が表れています。

4103作業風景

4103で使われるヌメ革は、革問屋さんから仕入れたものではなく、清冨さんがタンナーと呼ばれる鞣し(なめし)革業者と直接やり取りをして革づくりをするこだわり。バッグや靴などの革製品を扱う企業でも、タンナーと直接やり取りしてものづくりをするケースは少ないため、清冨さんの革に対する情熱がわかります。
「以前は黒とヌメ色で生産していましたが、お客様からの要望で色物も取り扱うようになりました。車で1時間ほどのところにあるタンナーへ赴き、最近は職人さんと1からオリジナルの色出しのやり取りをして革を作りたいと考えています。今はまだ企画段階ですがいつかお披露目できるかもしれません。」

ミニマルとクラフト 相反するものから生まれる新しいハーモニー

4103のプロダクトは靴作りをルーツとするデザイナーらしく、しっかりとした素材とシンプルなデザインが特徴です。シンプルでミニマルなフォルムに手縫いのクラフト、男性らしさと女性らしさ、対比から見る正反対のものから生まれる新しいハーモニーに惹きつけられます。それは、清冨さんご自身の経験や、感性に深く基づくデザインです。

「ボタンなどを使わない蓋を差し込むフラップ型デザインが特徴です。とにかくシンプルに流行にとらわれないデザインを目指しています。少し足りないくらいのミニマルなデザインを求めた結果、今のスタイルに落ち着きました。」  

4103のアイテム

ヌメ革の魅力を最大限引き出すためにステッチと金具を極力減らし、“折り”と”重なり“で構成された4103の美学を貫いたデザインは、機能性と美しさが緻密に計算されています。
「お客様からのこういうのが欲しいというリクエストがあると、小さなメモ用紙を折ったり重ねたりを試行錯誤しながら考えます。なぜかお風呂に入っている時とか、水が沸くところで良いアイディアが浮かぶことが多いんですよ。」

女性も楽しめるヌメ革を

4103のアイテム

ヌメ革は、堅くて男性っぽいワイルドなイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし4103では、柔らかく加工されたソフトヌメ革を、厚みを調整したり発色の良いカラーを選んだりすることで、女性の手にも馴染むアイテムになるよう心掛けながら制作されています。
「経年変化しやすいヌメ革は女性に敬遠されがちですが、汚れや使用感といったその人にしか出せない特徴をあえて加えることで、はじめて完成するものでありたいと思っています。」

4103のお客様は、9割が女性で1割が男性だそうです。男性は20代の若い層に受けているそう。
「ヌメ革小物というと、コンチョが付いていたり、脇に細い革を編みこんだウォレットチェーンみたいなものが付いていたりして装飾華美なものか、逆にそっけないほどシンプルなデザインなもののどちらかで、私が欲しいと思えるものがありませんでした。だから、男性っぽい印象のあるヌメ革を使いながらも、金具の色や素材の柔らかさで、女性でも使いやすい工夫をしています。」

発見した2次加工による新しい可能性

4103作業風景

ユーザー目線に立ったデザインをしながらも、自分らしさを商品で表現している清冨さん。ファッショは黒白のモノトーンコーディネートが多い中、アクセントとして赤や青ではなく、蛍光色やメタリックを使うことがお好きだそうです。そんな清冨さん独自の感性を生かしたものづくりに新たな可能性が現れています。
「現在マーブリングとスプラッターペイントに取り組んでいます。ヌメ革に手間を加えることで、革のアラ(焼印、傷、虫さされの跡など)をデザインにするのではなく、ヌメ革に蛍光色塗料をペイントすることで新しい表情をつくって、きれいに見せたいのです。」
ヌメ革の繊細で荘厳な雰囲気が、2次加工という素材の遊びで、多様性にあふれた個性的な魅力を放つことでしょう。手を加えられた新たな素材は、4103にユーモアさやキャッチーさ、ストリートカルチャーを匂わせる新しい風を吹き込んでくれそうです。

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