大人の日常を彩る上質なレザーバッグ
今回ご紹介するのは、as couture(アズクチュール)。シンプルなデザインをベースに、「日常に寄り添いながらコーディネートのアクセントになるようなもの」をコンセプトに、オリジナルレザーグッズを手作業で丁寧に仕上げるブランドです。今回は、as coutureのデザイナーであり制作者である佐保綾さんに、これまでと思い描く未来のことを伺いました。
レザークラフトとの出会い
佐保さんは大分県佐伯市に生まれ育ちました。手先を動かすモノづくりへの道は、大分にいらっしゃるご家族の影響がありそうです。
「幼い頃から工作が大好きで、祖母がいつも褒めてくれたのを覚えています。小学生の頃には、近くに住む伯母が洋裁や大島紬の機織りを仕事にしていたので、よく遊びに行っては洋裁やミシンの使い方を教えてもらいました。それに父はなんでも器用に作ってしまうんです。独学で能面彫りを30年ほどやっているんですよ。木材やDIY好きは父の影響だと思います。」
佐保さんは、地元の高校を卒業後インテリアの専門学校に進学。そこで建築やデザインについて学び、設計やディスプレイ、デザインの仕事をされていました。
「グラフィックデザインの仕事が一番長かったのですが、今のレザークラフトの仕事には、それまでのすべてがつながって活かされていると思います。」
レザークラフトとの出会いはどんなきっかけだったのでしょう。
「通販で買ったレザーバッグのショルダー部分を自分で短く直してみようとしたんです。持っている洋裁道具で簡単に縫い直せると思ったのですが、そうはいきませんでした。革には穴を開けるための道具と専用の針と糸が必要なことを知って、そこから少しずつ道具をそろえながらレザークラフトについて調べていきました。もともと“革”とファッションが好きだったこともあって、DIYと洋裁が一緒になったようなレザークラフトに“これだ!楽しい!”と思ったのを覚えています。それからは好きなデザインをカタチにしていくことに夢中になりました。」
もともとデザインや洋裁の素養があったとはいえ、独学でここまで革のバッグ作りを習得されてきた佐保さんの情熱とセンスに驚かされます。革のバッグ作りを勉強する中で、バッグ作家の江面旨美さんに影響を受けたとお伺いしました。
「シンプルで素朴なのになんて素敵なデザインなんだろうと、ワクワクしながらたくさんの作品を見て勉強させていただきました。“レザークラフトはこうでなくてはいけない”という概念を取り払ってくれた気がします。」
as coutureのはじまりはInstagram
「趣味で作るバッグがきちんとした形になり始めたので、『as couture』のブランド名を付けてinstagramに投稿し始めました。すると少しずつフォロワーが増えて、購入希望のお問い合わせをいただくようになりました。その頃に、学生時代の恩師であるギャラリーのオーナーからお声がけをいただいて、2017年に初めての受注展示会を開催しました。」
as coutureのブランドポリシーは「シンプルかつニュートラルなデザインとカラーをベースに、年齢や性別を問わず、使う人が心ときめくアイテムでファッションにスパイスを与えられる存在でありたい」。
作品は佐保さん自身が好きなモノトーン色を中心に展開され、お客様の年齢層は20~70代。幅広い年代の女性だけでなく、男性にも愛されるブランドとなりました。実際にお洒落な男性が巾着バッグをコーディネートに取り入れたり、スムースレザーのシリーズを選ばれることも多いそうです。
as coutureはインスタグラムを通じて顧客を増やしています。2021年9月には海を渡り、フランス・パリのboutique generale での取扱いがスタートしました。国境を越えて、佐保さんの感性とモノ作りが支持され、愛されています。
特別感はこだわりの結晶から
as coutureのマスターピースは、ウッドフレームのクラッチバックです。
「as coutureを立ち上げた初期に作った“木製口金のクラッチバッグ”は、たくさんの人が興味を持ってくださるアイキャッチ的な存在になりました。金具問屋さんで見つけた木製口金にひらめき、何度も型紙を作り直しながら今の形を完成させました。最近では、既製の木製口金の色味や風合いを、より革の質感やデザインにマッチさせるために、自分でウレタン塗装を剝離させて理想のデザインに近づけることができました。」
as coutureの人気商品である巾着バッグについても聞かせてください。
「はじめは手のひらサイズの小さな巾着から始まったのですが、お客様の要望とともにサイズや紐の長さなどにバリエーションが増えていきました。コロンとした形が可愛いと好評をいただいています。他にもスムースレザーで作った平らな巾着ポシェットや、筒型の巾着ポシェットも人気です。来年の春夏用にホワイトやライトグレーの巾着バッグも展開予定です。」
as coutureの作品には、タンニンなめしやクロムなめし、コンビなめしなどさまざまな製法の皮革が使用されています。中でも佐保さんが革の触感と質感、経年変化が好きだという、植物の樹皮から抽出したタンニンを使ったなめしの皮革が使われた作品が多いようです。口金はもちろん、ファスナーのかみあわせ部分(務歯=エレメント)も真鍮のTARONジッパーを使って、革と金属のバランスに大変気を配ったお仕事をされています。
「作品のほとんどは、目立つ部分にホックやバックルなどの金属は極力使用しません。金属一つで作品全体の雰囲気が変わってきてしまうからです。がま口のお財布シリーズの口金は、この口金を作ることができる職人は一人しかいない、という貴重なものを使っています。タンニンなめし革と同じく、経年変化を楽しめる真鍮無垢でできています。
表に見えるステッチは、長い紐などを除いてすべて麻糸を使って手縫いで仕上げます。麻糸を使った手縫いのステッチはミシンでは出せない風合いがあります。
このような一見気づかないような小さなこだわりの積み重ねが、as coutureの作品が持つ特別感につながっているのでしょう。
as coutureのこれから
「今は受注会をメインに活動させていただいていますが、as coutureの世界観はそのままに、お取引ショップ様のイメージに合わせた作品も制作していきたいと思っています。また、将来はオリジナルのレザーや金具、部品も作れたらいいなと思っています。」
海外でも取扱いがされるなど、as coutureは今後の飛躍が楽しみなブランドです。SIROKUでは、as coutureのリバイバル商品としてSIROKU限定色のバッグも展開しています。他に受注制作となりますが、人気の巾着バッグもラインアップしています。是非ご覧くださいませ。